岩瀬智子(高39回)

東京に暮らして16年、小さなベランダのあるマンションに住んで10年になります。朝出勤して夜遅く帰ってくる「規則正しい生活」は空から飛来するハトたちにとって絶好の条件らしく、毎年春から秋にかけてベランダには着々と「落とし物」が増えていきます。
初夏のある休日の朝、惰眠をむさぼっていると、つがいで遊んでいるような甘えた鳴き声がしてきました。いつもなら聞き流すのに、最近のふん害が派手だったので文句の一つも言ってやろうと飛び起き、ベランダに向かいました。カーテンを開けた私の目に飛び込んだものは、親から餌をもらっているハトのひな鳥!1羽と思いきや、後ろからもう1羽!!クルックー(絶句)。
昨年の東京は猛暑で、クーラーをかけずに寝ると寝不足になってしまうような日が続きました。例にもれず、私もクーラーをかけて寝ていましたが、熱をもった室外機の下でひなが死んだら困ると思い、その日からクーラーをとめました。また、室外機のそばに湯沸かし器のスイッチがあるので、親鳥が見張っているときは邪魔しないようにこちらが気を使い、水風呂でがまんしました。「ハトの恩返しがあったりして」などと、ちょっぴり期待していましたけれど、ふんしかくれませんでした。くそっ。
そんな迷惑なハトでも、ひなの行動はかわいいものがありました。親鳥が餌をもってくると口を大きく開けてチイチイと鳴きます。しかし、私がベランダの戸を開けたときには、2羽ともぴたりと鳴くのをやめ、しっぽや頭が室外機の陰から出ているにもかかわらず、視線を避けるかのようにしてじっとして動きません。そして、運悪く私と目があった時に見せる、はたはたと困っている姿もなかなかユニークだったので滅多に見ることのできないひなの成長を楽しく観察しました。そして、羽もそろい、無事お盆前に巣立っていきました。
サケが故郷の川に帰るように、ハトも生まれたところに戻ってくると聞きます。ハトの成長を眺めるのは嫌いではありませんでしたが、やはりふん害は困りものなので、ベランダの手すりに釣り糸を張るという方法を実践することにしました。まずは手すりのふんを取ってからと掃除を始めたところ室外機の下でかすかな物音がしました。またしても!白い卵をそばにおろおろしている親鳥を見つけてしまいました。ハトとの戦いはまだまだ続くようです。
効果的な撃退法をご存知の方、ご教示願えませんか?
(さし絵は、去年の那須良輔諷刺漫画大賞のグランプリ受賞者で和歌山市の漫画家ハシヨシヒサさんに協力いただきました)

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