中村淳(高31回)

新横浜ラーメン博物館(横浜市港北区、JR新横浜駅から徒歩5分)という施設をご存知でしょうか。全国のラーメン名店を一堂に集め、その美味しいラーメンを更に美味しく食べていただくアトモスフィアを醸成するために、昭和30年代のノスタルジックな街並みを再現した施設です。94年のオープン当時はかなり話題にもなり、10年近く経過した現在でもオープン当時を上回る勢いで集客しています。
カレー・ミュージアムや餃子・寿司などをテーマにした類似施設の先駆けとして、よく引き合いに出されているようです。
私はプロデューサーとして、この施設の立ち上げに関わらせていただき、実際オープン当時のラーメン店8店舗の出店契約には全部立ち会ったのでした。プロジェクトが立ち上がったのが91年10月、8店舗目の「一風堂」さんに契約いただいたのが93年4月頃だったと思いますが、その間の1年半余りは、ひたすら全国各地を回ってはラーメンを食べまくり、そのラーメンが美味しかったら店主に時間を取ってもらって企画を説明し、出店を促すことが私の仕事だったのです。
現実的には、「美味い!」と思って、店主に時間を取ってもらうのは10店に1店の割合だったでしょうか。つまり、1年半、私はひたすらラーメンを食べ続けることのみが仕事だったといっても過言ではないのでした。
その間のことをちょっとダイジェストしてみましょうか。
●このプロジェクトで訪れた最北端が旭川、最南端が鹿児島、その間食したラーメン店は500軒店以上。
●1日に最も多く食べたのは7杯。
●何度もお邪魔したのは、現在も博物館で営業していただいている「すみれ」さん。当時はなかなか出店をOKしてくれず、結局30回ぐらいは通ったと思います。
●この1年半で増えた私の体重は18キロ。プロジェクト終了時に過激なダイエットに挑み、1カ月半で15キロ戻しました。
門司の「絶品」は出店叶わず「まぼろしの味」に
ところで、このプロジェクトで様々なラーメン店と出合えたわけですが、どこが一番美味しく感じたかと聞かれれば、出店していただいたお店以外だったら、躊躇なく私は門司にあった「民子ラーメン」さんを挙げます。九州男児としてはぜひとも出店していただきたかったのですが、諸般の事情で叶いませんでした。今も営業しているのかどうかも定かではありませんが、私が知る限り、他店との類似が全く感じられない独特で、一口すすれば「絶品!」と叫ばずにはいられない味は、私の筆力では到底再現不能です。ラーメン博物館に出店していただいて一人でも多くの人に、その「まぼろし」の味を堪能していただく機会を作れなかったのが今でも心残りなのでした。