「何かあったらメールでお尋ねください」
有田 淳(高33回)
3つの治療法について
現在、都内の病院の消化器外科に勤務しています。今回、先輩居並ぶ編集部より「何か同窓生に役立つ情報を」とのご注文をいただき、いろいろ考えましたが、高齢化とともに増える生活習慣病で、私の専門である消化器癌の診断と治療についてお話しさせていただきたいと思います。
消化管(食道・胃・大腸)の癌の治療は大きく、①内視鏡治療、②手術療法、③化学療法の3つに分かれます。
まず、①は内視鏡(胃カメラ、大腸ファイバースコープ)を用いて癌を切除する方法です。
②は、縮小手術と拡大手術に分かれ、縮小手術は腹部に小さな穴を開けて腹腔鏡と呼ばれるカメラの付いた手術装置を体内に入れ、カメラの映像を見ながら遠隔操作で手術します。小さな傷で済むのが特長です。これに対して拡大手術は一般に「胃を取った」などと言われる手術で、胃の約3分の2を取る胃亜全摘術、胃全部を取る胃全摘術などがあります。この手術では、消化管とその周辺のリンパ節、癌の浸潤した臓器を切除する場合もあり、非常に大きな手術となります。
③の化学療法は抗癌剤を投与する方法で、これには手術不能例に行う場合と、手術後に残った「癌の芽」を断つための補助療法とがあります。
3つのうち、どの治療を行うかの決定は、胃透視や大腸にバリウムを入れる注腸検査といったX線検査や内視鏡検査、CT検査などにより判断されます。
消化管は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5層構造からなっています。このうち粘膜下層までに病変がとどまるものを早期癌、それ以深(筋層以深)を進行癌といいます。また、粘膜下層も3層に分け、SM1、SM2、SM3と呼びます。内視鏡治療はSM2より浅い病変に対して、手術療法は浅いが大きく内視鏡治療ができないものや進行癌に対して行います。
また、化学療法は先にも紹介しましたように、手術後および手術不能例に対しても行われます。
早期の癌はほとんど無症状
以上が現在やられている標準的な治療法です。どの治療法を選ぶかは癌の進行度によって決められます。言い方を変えれば、癌が発見された時点で治療法が決定されているとも言えます。このことからも、癌の早期発見が大切ということがお分かりいただけると思います。
消化器癌は早期癌の場合、ほとんど無症状で経過します。進行癌は、食道癌の場合は胸やけや、水は飲めるが固形物は通らないといった通過障害の症状、胃癌では胃の部位にもよりますが胃痛、嘔吐、「コーヒー残渣」といって茶褐色の吐物があるなどの症状、大腸癌では便に血液が混じったり、腹部膨満感や排便障害、下痢、便秘などがあります。直腸癌では残便感、便柱狭小(便が細くなる)などの症状を呈する場合があります。
いずれにしても、早期発見にはやはり検診や人間ドックなど日頃から市区町村の「がん検診」を受けたり、医師に相談されるのがよいと思います。
胃がん検診はペプシノーゲン法と呼ばれる血液検査を行うか、胃のバリウム検査を受け、異常が指摘されれば胃カメラによる検査を行います。
大腸癌は便潜血という検査を2回行います。これはポリープや癌、大腸憩室といった病気のある場合、陽性になります。注腸検査(大腸のバリウム検査)を行った後、異常があれば大腸内視鏡で調べます。早期癌やポリープなら、その時に内視鏡治療を実施します。この場合、1泊か2泊の入院が必要で、2週間は飲酒や激しい運動など禁止することになります。
以上からもお分かりいただけるように、何といっても早期発見が癌の最良の治療法といえます。
不明な点や、私でお役に立てることがありましたら、ご遠慮なくメール(reika@kosei-hp.or.jp)にてお尋ねください。同窓の皆さまの健康をお祈りしつつ。