2019年7月20日(土)午後、東京・日比谷の日本プレスセンターホールにて、小松政夫さんの講演会に参加しました。主催は東京新聞で、令和元年記念として「人生100年時代を生きる」と題して開催された東京新聞フォーラムの基調講演として行われました。

梅雨明け前の蒸し暑いなか、開催15分ほど前に会場に到着すると、300人くらいの聴講者で会場内はほぼ満席。参加者の多くは50歳以上のようでしたが、中には若い世代の姿もみられました。

講演の冒頭,主催者から、令和初の当該フォーラムに小松さんをお招きした理由の紹介がありました。昨年、東京新聞に連載された小松さんの一代記が大好評だったとのこと。主催者あいさつののち、さっそうと登壇された小松政夫さんは白っぽいスーツの上下で最高にキメていらっしゃいました。以下は講演の主な内容です。

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基調講演「ひょうげもん一代記」

・厳しい父親だった。食事中に父親から箸で額を叩かれて出血し,ご飯のうえに滴る血を「明太子がご飯の上に乗って美味しくなった」と言ったらまた叱られた。その父と13歳の時に死別。その後は数千万円の父の借金のため転居を繰り返した。

・高校くらいは卒業しておきたいと思い、福岡高校定時制に入った。高校に通いながら、アルバイトをしていた。お世話になったアルバイト先は銘菓「鶴乃子」があるお菓子屋(石村萬盛堂)さんだった。高校を卒業し上京するためアルバイトを辞めたが,辞めるときに上京資金の借金を申し入れたところ、餞別としてお金を出してくれた。現在,代替わりしているが、引き続きお付き合いをさせてもらっている。

・上京して劇団を受けて合格したが、入学金が払えず、劇団に入るのをあきらめて就職した。

・いろいろな仕事をしたが、はんこ屋さんでは、その家の娘に好かれ、結婚を打診された。しかし、俳優になりたかったので、その話を断ってはんこ屋さんを退職することになった。

・薬の営業の仕事に就いていたこともある。薬を売り込むのに、人里はなれた病院をターゲットにした。そこの看護婦長さんと面会したところ、上京して初めて聞いた博多弁! 出身地を聞いたところ、福岡の西新出身だった。そのご縁で薬を買ってもらった。

・その後,コピー機販売の仕事に就き、横浜トヨペットにコピー機を売り込みに行った。トヨペットでは、社員の皆さんにお茶を入れて回り、社員の名前を覚えた。そのような営業ぶりをみていたトヨペットの34歳の営業部長から、ある日打診されて転職することになった。

・トヨペットでは、車販売台数のノルマが厳しかった.ノルマを達成するために、免許を持ってない人に車を販売したこともある。その際は、車を売った人に免許を取らせたいとして、8日間で免許を取らせてくれと自動車学校に無理なお願いをしたりした。

・ある時、営業部全体で月締め実績を確認したところ、最終日の夜10時の時点で、目標に1台不足していた。「明日キャンセルしてもいいから,お前があと1台何とかしろ」と営業部長から指示を受けた。そこで、以前契約してもらったお医者さんの家を深夜にもかかわらず訪問し、寝ていたところを起こしてなんとか買ってもらった。その際、そのお医者さんから、購入の条件として「週一回うちに来てご飯を一緒に食べること」と言われ,涙が出た。

・食事しながらときどきテレビをみていた。植木等の番組などが好きだった。ある時、新聞に「植木等の運転手の募集」の旨の広告が掲載されていた。そこで面接にいったところ、高倍率だったが受かることができた。

・植木等の車の運転手になったばかりのころ、ゴルフ場で中曽根総理などに、植木等から「こいつは小松といいますが、将来活躍するので覚えてやってほしい」旨、紹介されてびっくりした。そのゴルフの最中、車を磨いていて昼食を取り損ねてしまった。その帰り道で、昼食を食べていないことを植木等から指摘され、蕎麦屋に寄ることになった。蕎麦屋では、自分はそばを注文し、植木等はかつ丼と天丼を注文した。そばが先に来て植木等から先に食べろと言われて食べた。その後、かつ丼と天丼が来たが、植木等から「医者から揚げ物を食べてはいけないと言われたのを思い出した、かつ丼と天丼も食べてくれ」と言われた。植木は最初から自分が食べるつもりはなく注文してくれたのだった。。。

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講演の間、会場内は終始笑い声で包まれ、予定されていた講演時間60分を過ぎても盛り上がり続けていました.フォーラムの事務局から切り上げるよう促され、最後は「電線音頭」を舞台上で踊って、講演を締められました。

結局10分超過の70分間。フォーラムのテーマ「人生100年時代を生きる」にふさわしい、ひょうげもん・喜劇人として走っている小松さんの笑いにかける熱意と努力、そして、仁義や人情を大切にする姿勢にとても感動しました。このような機会を与えてくださった、小松政夫さんのご友人の柳智さまをはじめ、関係された皆さまにこの紙面をお借りしてお礼を申し上げます。

最後になりましたが、前述の小松さんの東京新聞での連載は、今春に「ひょうげもん―コメディアン奮戦!」として書籍出版されています。今回報告内容の詳細のほか、楽しいお話や心温まるお話がたくさん載っています。ぜひご一読ください。

hyougemon

新谷康之(高35回、東京福中・福高同窓会副会長)